どうしても銭湯を再開させたかった。~湯を沸かすほどの熱い愛~

中野量太監督インタビュー
「SAVE THE 銭湯!」 とは?
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毎週水曜日(最終水曜日はお休み)に更新しています。

VOL.13 対談 GUEST

  • 中野量太(湯を沸かすほどの熱い愛 監督)
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  • 田村祐一 (日の出湯経営者/SAVE THE 銭湯!主宰)

映画『湯を沸かすほどの熱い愛』
中野量太監督インタビュー

対談14 WEEK1どうしても銭湯を再開させたかった

今回のSAVETHE銭湯は映画「湯を沸かすほどの熱い愛」監督の中野量太さんをお迎えして、映画の話、銭湯の話をお伺いしました。
今回のインタビューでは、なぜ中野監督は、映画の中で「銭湯を再開させたのか?」について、迫ってみたいと思います。

心を揺さぶってやろう、と思ってつくった

田村祐一 (以下 田村):
本日はお時間いただきありがとうございます。「湯を沸かすほどの熱い愛」を観させていただきました。これまでの人生で、映画を観て、こんなに泣いたのははじめて、というくらい泣きました。

中野量太監督(以下 中野監督):
そんなに映画を観てないんじゃないですか?(笑)

田村:
「家族」や「銭湯」という設定で、余計に感情移入した部分もあるかもしれませんが、とにかく泣きました。笑 ただ一番後ろから観ていましたが、私だけでなく会場にいた全員がすすり泣いていました。特に最後のシーンは・・・。もう勘弁してください!って思うくらいに泣きました。(笑)
本当に感動しました。

中野監督:
泣かそう、と思ってつくったわけではありませんが、誰かが人のために生きる、そんな部分に焦点を当てて、心を揺さぶってやろう、と思ってつくったので、そこが「泣く」というカタチに繋がったのかもしれません。

どうしても銭湯を再開させたかった

湯を沸かすほどの熱い愛

湯を沸かすほどの熱い愛

田村:
実は、私は実家が銭湯なので、生まれてからずっと銭湯が近くにあり、自身も大学卒業後14年「銭湯」経営に携わっています。
そんな中でまず一番気になった部分は映画全体の設定「余命宣告を受けた主人公が、家出した夫を連れ帰り、“銭湯”を“再開”させる。」の部分。監督の映画学校時代の卒業制作の作品が“銭湯”を舞台にした事も関係しているとのことですが、「再開」という設定へのこだわりについて、お聞かせいただければ、と思います。

中野監督:
昔、テレビの仕事もしていて銭湯に関する番組取材も経験したことがあります。
その時に、月に何十軒単位で銭湯が廃業している、との話を耳にしていました。

田村
確かに廃業していく銭湯は少なくありません。
知り合いの銭湯でも跡継ぎ問題等で苦労しているお店も少なくありません

中野監督:
私自身、小さい頃から銭湯のあの独特な雰囲気が好きでした。
知らない人同士が裸で同じ湯船に入っている不思議な空間ですが、
「人の営みの場」
の象徴としてのイメージがあります。

田村
銭湯が「人の営みの場」ですか。ハッとする表現ですね。

中野監督
人の営みの場である銭湯は、それと同時に「なくしちゃいけない場所」との想いもありました。だから映画に登場する「幸の湯」も古い銭湯だけれど、潰させない。あの銭湯を家族で再開させることには強い想いを込めています。家族の再開であり、人の営みの再開にも繋がるような気がして、どうしても銭湯を再開させたかったのです。

田村:
ちなみに、監督は今も銭湯に行かれる事はありますか?

中野監督
今も行きますよ。銭湯に行くと、元気になる感じがありませんか? 家にお風呂はあるので、頻度は高くないですが、「今日は疲れたなぁ」と感じた日には銭湯の湯船に浸かりたくなります。銭湯に入ると「さぁイチからやり直そう!」と気分転換ができるし、気持ちがリセットできる気がします。やっぱり家のお風呂とは違って、どこか特別な感じがあるので、何かあったら近所の銭湯に入りに行きます。

田村:
家のお風呂とは違う特別感。お風呂屋冥利に尽きる言葉をありがとうございます。(笑)

銭湯再開のあの瞬間を、あの町のみんなは待ちわびていた。
そんな気がして

湯を沸かすほどの熱い愛 中野量太 監督

湯を沸かすほどの熱い愛 中野量太 監督

田村:
銭湯経営者としての視点で映画を観ていて脳裏に焼き付いているのが、「銭湯を再開した日」のシーン。ほんの数秒のシーンでしたが、すごく印象に残っています。あのシーンにはどんな想いが込められているのでしょうか?

中野監督
1年振りに再開した銭湯「幸の湯」で、みんなが再開して会話を交わしているシーンですかね? 本当に短いシーンですよね。私の中では、銭湯再開のあの瞬間を、あの町のみんなは待ちわびていた。そんな気がして、その再開の喜びを表現するために、あのシーンを撮りました。

田村:
あのシーンを観ていて、普通じゃない、というかどこか特別な感じがしたのです。

中野監督:
普通であれば、休業していた銭湯が再開したところで、人は集まらないのかもしれません。でも、あの町の人に限ってはあの銭湯の再会を心待ちにしていて、「幸の湯」の浴場や脱衣場で、笑顔で再会を果たして会話を交わす、そんなイメージが沸いてきたのです。

田村:
それを聞いて、すごくしっくり来ます。監督が先ほどおっしゃられた言葉「人の営みの再開」が浮かんできました。コミュニティの場としての銭湯の持つ役割を考えさせられます。

中野監督:
ちなみに、再開を喜ぶお客さんの中に、あれはうちの兄ちゃんがいますです。笑

田村:
え?実のお兄さんが映っているんですか?あのシーンに?

中野監督:
はい。(笑) どうしても参加したい!と言って、エキストラとして、わざわざそのためだけに京都から駆けつけてくれました。笑 あのシーンの中に映っていますよ。

田村:
え、京都から?撮影のためだけに? すごい!!熱いお兄さんですね!
これ、書いてもいいですか?

中野監督
はい、構いませんよ。(笑)
(次週につづく)

『湯を沸かすほどの熱い愛』は
10月29日(土)新宿バルト9他全国ロードショー

配給:クロックワークス
コピーライト:(C)2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会
 
公開表記:10月29日(土)新宿バルト9他全国ロードショー
公式サイト:atsui-ai.com
出演:宮沢りえ  杉咲花  篠原ゆき子 駿河太郎 伊東蒼 /松坂桃李 /オダギリジョー
脚本・監督:中野量太

中野量太(『湯を沸かすほどの熱い愛』監督)

1973年7月27日生まれ、京都府育ち。大学卒業後、日本映画学校に入学。卒業制作の『バンザイ人生まっ赤っ赤。』(00)が日本映画学校今村昌平賞、TAMA NEW WAVEグランプリなどを受賞。卒業後、助監督やテレビディレクターを経て6年ぶりに撮った短編映画『ロケットパンチを君に!』(06)が、ひろしま映像展グランプリ、長岡インディーズムービー コンペティション グランプリ、福井映画祭グランプリ、水戸短編映像祭準グランプリなど7つの賞に輝く。08年には文化庁若手映画作家育成プロジェクトに選出され、35mmフィルムで制作した短編映画『琥珀色のキラキラ』が高い評価を得る。その後、『チチを撮りに』(12)が、第9回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて日本人初の監督賞を受賞、第63回ベルリン国際映画祭正式招待を皮切りに、各国の映画祭に招待され、第3回サハリン国際映画祭グランプリなど国内外で14の賞に輝く。いま日本で最も注目の若手監督の一人。

関連WEBサイト
映画『湯を沸かすほどの熱い愛』オフィシャルサイト

Special Thanks

Yuki Katuragawa

田村 祐一

田村 祐一SAVE THE 銭湯!主催者

投稿者プロフィール

1980年東京都大田区生まれ。
東京蒲田にある大田黒湯温泉第二日の出湯の四代目、銭湯の跡取りとして生まれ育つ。
大学卒業後、家業である有限会社日の出湯に就職。26歳の時に取締役に就任。
2012年5月より創業の地である浅草にある銭湯、日の出湯のマネージャーとして銭湯経営再建に着手。
2012年11月、銭湯を日本の未来に残すプロジェクトの一環として銭湯の未来をつくるWEBマガジン『SAVE THE 銭湯!』を創刊。

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